不動産投資を始める時に知っておきたい「不動産所得」「事業規模」とは?

不動産投資を行う場合には、その不動産に付随する権利等から利益が生じます。そしてその利益を「不動産所得」と言いますが、個人に対して、あるいは事業的にどういった扱いになるのかについて見ていきましょう。

不動産所得

不動産所得

不動産投資を行うことで得られる利益のことを「不動産所得」といいます。まずはこの不動産投資について詳しく見ていきましょう。

不動産の種類

一口に「不動産」と言っても多くの種類や種別、類型などが定められています。

大きく分けると“地域”の種別と“土地”の種別があり、“地域”の種別の中には更に「宅地」「農地」「林地」などに分類されます。

“土地”の種別の中にも更に「宅地」「農地」「林地」「見込地」などの項目があり、該当するものに分類されます。不動産の鑑定評価基準は、これらの観点から該当項目が判断されて分類が行われます。

土地、建物、所有権といったものが不動産としてみなされます。

不動産所得とは

一般的に不動産所得とは「不動産の貸し付け」「不動産上の権利の貸し付け」「船舶や航空機の貸し付け」によって生じる所得の事をいいます。

不動産の貸し付け

貸事務所、貸家、貸宅地、貸テナント、マンション、アパートなどを第三者に貸し付けることを指します。

不動産上の権利の貸し付け

権利の貸し付けとは、地上権や地役件、借地権、永小作権といった借地権などの権利の貸し付けのことを指します。

船舶や航空機の貸し付け

船舶(総トン数20t未満の船舶を除く)や航空機の貸し付けのことを指します。

不動産所得の対象外例

例えば同じ不動産を扱う事で生じた利益でも、「不動産を譲渡することで得た収益」や「土地を活用した時間貸し駐車場の収益」などは不動産所得にはならず、それぞれ“譲渡所得”や“事業所得(あるいは雑所得)”とみなされます。

不動産所得の算出方法

不動産の貸し付けによって得られる収益が「不動産所得」の大元になりますが、実際に確定申告を行う上では得られた「収益」から「必要経費」を差し引く事で所得金額を算出します。

“不動産所得=不動産総収入―必要経費”

このような計算式になりますが、このうち「必要経費」としてみなされる費用の対象が、この後紹介する「事業規模」の判断基準に影響される仕組みとなっています。

事業規模

事業規模

不動産投資を行う際によく注目されるのが「事業規模」というワードです。この「事業規模」とはいったいどのようなものなのでしょうか。

事業規模とは

「事業規模」というのはつまり、不動産投資で得た「不動産所得」が“事業の収益としてみなされるか否か”という判断項目において“事業としての収益”に属するものを指します。

不動産所得が「事業的規模」として認められるには、以下のいずれかの項目に該当する必要があります。

①アパート、貸間など貸し付けの場合
貸与する事の出来る独立した室数がおおむね10室以上であること

②独立した家屋の貸し付けの場合
収益対象の物件がおおむね5棟以上であること

③土地の場合
契約件数がおおむね50件以上であること(土地を活用して駐車場とし、区画を時間貸しするような場合にはおおむね5台で通常の物件の1室としてみなされる)

上記のような条件に該当する場合には、該当の不動産投資で得た収益による不動産所得において「事業的規模」の計算に則った所得計算をする事ができるように定められています。

事業規模判定

不動産所得では、その所得が「事業的規模」のものであるか、あるいは「事業的規模に至らない」ものなのかによって、所得金額を算出する計算額の取り扱いが異なります。

代表的なものとして「資産損失」「事業専従者給与」「青色申告特別控除」などが挙げられます。

資産損失

物件の取り壊しなどによる損失額に関し、不動産の貸し付けが事業規模に値しない場合には必要経費の算出に対して限度が設定されています。

専業専従者給与

不動産の貸し付けが事業的規模で行われているか否かによって、家族専業従事者にかかる専業専従者控除や青色事業者専従者給与を必要経費に算入する事ができるかどうかが異なります。

青色申告特別控除

確定申告において青色申告を行う者には青色申告特別控除が認められますが、この場合にその他の事業所得がなく不動産所得のみであり、更にその不動産の貸し付けが事業的規模の対象外となる場合、青色申告特別控除は最高10万円となります。

事業的規模対象のメリット

事業的規模対象のメリット

不動産所得、そしてその所得を算出するための経費対象に関係する事業的規模について紹介しました。

では実際に不動産投資を行う上でそこで得られる収益が「事業的規模」の対象である事でどのようなメリットがあるのかという点を確認していきましょう。

青色申告の特別控除

事業的規模に該当し、更に定められた原則に則った記帳を行うなどの一定要件を満たす事で、不動産投資で得られる家賃収入から経費を差し引いた不動産所得から更に65万円の控除を適応させる事ができます。

家族従事者の給与

不動産投資が事業的規模とみなされれば、各種条件を満たす場合に家族への給与(専業自専従者給与)を経費として計上する事が出来ます。

白色申告なら50万円(配偶者の場合86万円)ですが、青色申告なら届け出の範囲内で正当な金額を経費として計上することが可能です。

取り壊し等による損失

地震、火災などで、所有する投資用物件に被害が生じた場合に、事業的規模に該当していればそこにかかる費用の全額を経費として計上する事が可能です。

尚、かかった費用が当該年度の所得から引ききれない場合には3年間の繰り越しが認められています。

回収不能賃金

不動産投資で第三者に物件を貸し出して賃金を回収する場合、入居者側のなんらかの都合により定められた分の賃料が回収不能となるケースがあります。こういった賃料の踏み倒し等による損失は当該年度の経費として計上する事が出来ます。

事業的規模対象のデメリット

事業的規模対象のデメリット

事業的規模の対象となる事で期待できるメリットについて紹介してきましたが、反対に事業的規模に該当する条件で不動産投資を展開する場合に懸念されるデメリットについても確認しておきましょう。

事業税

不動産投資の規模が事業的とみなされる場合、その所得は各都道府県が課税する事業税の納付対象となります。青色申告特別控除額を差し引く前の所得から290万円の事業主控除を差し引いた残額に対して5%が課税されます。(課税対象の規模については各都道府県で規定が異なる為確認が必要です)

配偶者控除、扶養控除

事業的規模対象のメリットとして挙げた「家族従事者の給与を経費計上できる」という項目の副作用のようなものですが、家族に専業専従者給与の支払いを行うと配偶者控除や扶養控除受けることはできなくなります。

帳簿作成

青色申告で65万円の特別控除を受ける為には、白色申告のような簡易的なものではなく複式簿記での記帳を行った上で賃借対照表と損益計算書を作成する必要があります。また、帳簿は7年間保管しておく義務がある事を覚えておきましょう。

まとめ

不動産投資を始める時に知っておきたい

いかがでしたでしょうか。ここでは、不動産投資で得られる「不動産所得」や「事業的規模」についてその概要やメリット・デメリットを紹介してきました。

事業規模として認められる基準については認定の基準に多少の幅がある点を理解しておくことや、メリットを受けるにあたって生じる可能性があるデメリットとの比較を行い、損のない事業展開をしていく必要があります。

これから不動産投資をして事業を始めようと思っている方はもちろん、この先投資規模を拡大して事業展開しようと思っている方も、収支管理のために是非仕組みを理解して上手く活用していただきたいと思います。

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