【税対策】土地にアパートを建築する“相続対策”とは

土地を所有している場合に、その土地の権利を家族などに譲渡する際には定められた既定に則り、相続税を支払う義務が生じます。この相続税を節約するための方法として「土地にアパートを建設し、不動産事業を行う」という方法があります。

なぜアパートを建築する事で相続税の節税につながるのか、その仕組みやメリット・デメリットについて見ていきましょう。

相続税

相続税

親などから土地を譲り受ける(相続する)と相続税が発生するというのは何となく知識として持っている方も多いのではないでしょうか。では実際に「相続税」がどのような税金なのか、基本情報について詳しく見ていきましょう。

相続税とは

相続税とは、親や親族が亡くなった際に、故人が所有していた財産を相続した人に課せられる税金です。亡くなった際だけでなく「生前贈与」という仕組みを使って予め財産を相続しておく方法もあります。

財産の相続においてこの「相続税」が課せられるのは、相続する財産の算出額が予め定められている一定額を超えた場合です。定められた一定額を超えた部分の財産に対して相続税対象額として計算され、課税される仕組みです。

生前贈与ではなく、他界が贈与の起点となる場合には、死亡した人(被相続人)が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内が申告期限です。万一この期限までに申告を行わなかった場合には“無申告”の扱いとなり「無申告加算税」が別途発生します。

相続税の計算

相続税の課税対象となる財産は、被相続人から相続した財産です。相続税の財産を評価する計算方法の原則は「時価」です。つまり土地を相続する場合にはその土地の“地価”が目安にはなりますが、正確には「相続税評価額」という評価基準に従って評価されます。

建物(家屋)は固定資産税評価額がそのまま相続税評価額に。土地については“路線価方式”と“倍率方式”のいずれかの方法で相続税が評価されます。

土地の相続税

土地の相続税

この記事のテーマである、“相続予定の土地にアパートを建築することで節税になる”という点に関わるのですが、相続税の税額を決める上での「土地の評価」についてもう少し詳しく触れていきます。

路線価方式

土地の相続税評価額を決める方法の一つ「路線価方式」が適応される土地は“道路に面している土地”です。従って市街地にある建物などはほとんどがこの路線価方式で評価額を算出する対象の土地になるでしょう。

「路線価」とは、宅地に面している道路に設定された、標準的な宅地1㎡あたりの評価額を指します。不動産鑑定士による評価額や、公示価格・売買価格などを参考にして国が決定している物です。その宅地の“利用価値の高さ”がこの路線価に反映されていると言えます。

倍率方式

土地の相続評価額を決める方法のもう一つが「倍率方式」と呼ばれる算出方法です。この倍率方式が採用されるのは“路線価が定められていない地域の土地”です。田や畑、山林などもこの対象になります。その土地の固定資産税評価額に対し、一定の倍率を乗じて算出しますがこの評価倍率については国税庁のホームページにも公表されています。

評価特徴

上記のように多くの土地では「路線価方式」に基づいて相続評価額が算出されますが、この「路線価」は通常、鑑定士の評価や売買価格などのデータが関与しますので純粋な土地の「時価」よりも安くなります。更には、個人用の宅地よりも賃貸用の建物が建築されている方が土地活用の自由度が下がるとみなされ、評価が下がってその分相続評価額も下がるという仕組みになっています。

アパート建築×相続税

アパート建築×相続税

お伝えした通り、土地の評価方法の特徴として言えるのが“賃貸用の建物が建築されている方が、土地の評価が下がる”という事です。この仕組みを利用する事で期待できるのが相続税の節約です。では具体的にどのような仕組みなのか確認していきましょう。

賃貸住宅の建築

「賃貸住宅が建てられている土地は評価が低い」という前提条件がありますが、これが一体なぜかという点にも触れておきます。

第一に、価値のある土地とは、立地はもちろんですがその土地に建物を建てられるかどうかという点が重要項目として判断されます。建築物を立ててはいけない“市街化調整区域”は、建物が多く建つ市街地よりも地価が安い傾向にありますし、田畑や山林は言うまでもありません。そういった概念がある中で、“既に建物が建っている”という事、加えて、個人の世帯が居住する家ではなく、異なる複数の世帯が入居する共同住宅、つまりアパートやマンションはその土地を他人に貸しているのと同じことで、土地を活用する自由度は低いとみなされるのです。

評価額

土地にかかる相続税の税額を算出する際には土地の評価が算出の根拠となり、その評価は「路線価方式」「倍率方式」で決められることがわかりました。(3-1賃貸住宅の建築)で申し上げたように、土地にアパートやマンションなどの共同住宅を建築することで土地の評価は下がりますので、相続する場合の相続税の計算額も低くなるということが言えます。

「土地」そのものをただ相続するよりも、アパート建築などで土地活用を進めた上で相続の手続きを進める事で節税が期待できるというわけです。

事業の法人化

土地に集合住宅を建築したとして、その後は物件のオーナーとして賃貸事業を運営していく必要があります。事業者として登録せずに雑所得などの副収入のような扱いで確定申告を行う方法もありますし、完全に事業を他に委託してしまう方法もありますが、最も税金を節約できる方法は賃貸業を“法人化”することです。相続対象だった土地にアパートを建築して法人の所有物として賃貸業を行えば、その不動産は相続税の計算対象外になります。

賃貸物件建築のデメリット

賃貸物件建築のデメリット

相続対象の土地に賃貸物件を建築すること、そして法人化することで節税対策になるという点を紹介してきました。不動産という財産の相続で、できる限りの節税を実現する有効な方法ですが、伴うデメリットについても注意しておく必要があります。

賃貸物件建築のデメリット3点

資金リスク

アパートなど、賃貸物件を建築して事業を行うという事は「投資」を行う事です。上下する株価が読めない株式を購入するのとは違い、不動産投資なら、入居者を募って家賃収入を得る事で安定した収益が得られるという明確なビジョンがあります。しかしながらそこにはある程度の初期費用が必要になりますし、ランニングコストもかかります。月々のローン返済は入居者からの家賃収入が元になりますが、万一空室が続いた場合の事も視野に入れておく必要があります。初期費用、ローン返済、維持費…事業を始める上ではそれなりの資金も必要になるという点を理解しておく事が大切です。

管理リスク

ランニングコストが必要となる点と重なりますが、不動産投資(賃貸事業)は建物を立てて終わりではありません。その後物件を管理していく上でのオーナーとしての役割はいくつもあります。物件の管理は管理会社に任せるケースがほとんどですが、管理会社と契約して管理費用を支払えば終わりという訳ではありません。建物の設備管理、入居者からの依頼など、追加費用の掛かるものや物件の維持に関わる事項については都度確認や判断が必要です。“物件のオーナーになる”という、ある程度の心構えは必要と言えるでしょう。

確定申告

賃貸物件を建築する事で相続税を節税、あるいは回避することができますが、事業としての収益が発生するという点では、別途確定申告の義務が生じる事になります。

また、収益が発生することで所得が生じる為に所得税や住民税などの支払いが生じる点にも注意が必要です。事業を行うにあたっては様々な支出も考慮した経営ビジョンを整えておかないと、せっかく相続税を節税しても他の支出が増えて結果的に相続した不動産が重荷となってしまう事にもなりかねません。

事業を行う上では会計知識のプロにまず相談をしてみると良いでしょう。

まとめ

土地にアパートを建築する相続対策とは

いかがでしたでしょうか。ここでは、土地などの不動産を相続する際の節税対策として、アパートなどの賃貸物件の建築、賃貸事業を紹介しました。

財産を相続するだけで発生する税金。少しでも節税したいというのが多くの意見かと思います。土地だけを持て余すのではなく、不動産投資という形でうまくその財産を活用でるよう、一つの選択肢として検討してみてはいかがでしょうか。

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