不動産投資用の投資物件の多くはアパートやマンションといった集合住宅かと思います。では、この物件を通常の居住用物件として貸し出すのではなく、会社や個人事業主などの事務所の一室として貸し出す「事務所利用」にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
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事務所利用
マンションやアパートなどの物件の1室を事業の事務所として利用しているようなケースを見た事はあるでしょうか。まずはそういった事例や特徴について見ていきましょう。
事業利用
特に駅チカの物件などに多く見られますが、マンションやアパートなど、基本的には人が日常的に住んでいるような集合住宅の中の1室を事業の事務所として利用しているケースがあります。整体・リラクゼーションサロン・ネイルサロン・アイラッシュサロンといったサービス業が比較的多い傾向にあります。
ワーキングスペース
政府が推進する「働き方改革」や、新型コロナウイルスの感染拡大もあり、2020年を過ぎてからは在宅ワークの利用率が高まりました。
また、副業推進やIT技術の進歩に伴って、仕事の受注をネットなどで行うフリーランスの働き方を選択する人も増えてきました。こういった方々のワークスタイルの一つとしてSOHOも注目されています。
※「SOHO」とはSmall Office Home Officeの略で、小規模なオフィスや自宅などを職場として働く働き方やその物件のことを言います。
事務所利用可能のメリット
先に紹介した通り、リモートワークで需要が高まるオフィス展開の一つとして「シェアオフィス」もあります。シェアオフィスは企業が事業として「場」を提供しているケースが多く、規模感もそれなりの広さが確保されている所が多いでしょう。ここでは、アパートやマンションなどの賃貸物件を事務所利用可とすることのメリットについて見ていきましょう。
物件状態の維持
通常物件(居住用)として部屋を貸し出す場合には、入居者に悪意が無くても利用年月と共に物件状態は悪化します。壁・床はもちろん、シャワールームや台所などの水回りは汚れに加えて経年劣化も否めません。しかし、これがもし住居利用ではなく事務所利用であれば部屋や設備の利用頻度は少なく滞在時間も短いので部屋の汚損レベルは抑える事が出来ます。
空室防止
不動産投資(賃貸物件の貸し出し)事業における最大の懸念事項と言っても過言ではないのが“空室リスク”です。多くの場合、入居者からの家賃収入をもとにしてローン返済を行いますから、万一空室が続いてしまった場合にはそれだけ家賃収入が減り、ローン返済に自己資金の持ち出しが発生する事になります。しかし、事業向けにも物件を貸し出す事を良しとしていれば、SOHOのニーズもありますし、ただ居住用として入居者を募るよりも稼働率を高め、空室発生のリスクを低減する事が出来ます。
賃料の上乗せ
建物自体が元々、居住用として建てられているマンションやアパートなどでは、本来の用途と異なる使い方をすることでマイナス要素のリスクもあるといった点から、他の部屋と同様の間取りや広さでも事務所利用の場合には多少の賃料の上乗せがあるケースも多いと言えます。多少割高な賃料だったとしても、立地や用途がマッチすればオーナーに有利な条件で契約を結ぶ事が出来、収益性の向上が見込めます。
事務所利用可能のデメリット
居住向けの賃貸物件を事業用に貸し出す事で期待できるメリットもある事がわかりました。しかし現状、事業利用向けには物件を貸し出さないというオーナーも多くいるのが事実です。では、そういったオーナーが考える事務所利用のデメリットについても見ていきましょう。
区分所有
例えばマンション1棟やアパート1棟など、建物をまるごと管理するオーナーならば自分の判断で決めても良いのですが、「区分所有」などで建物のうちの一部の部屋のオーナーである場合には、建物全体が事業利用を禁止していればそれに則るしかありません。区分所有の場合にはなかなか融通が効きにくく、そもそも事業利用向けの貸し出しが出来ないケースもあるという点を認識しておく必要があります。
近隣トラブル
全ての部屋が事務所向けの貸し出しではなく、一般居住用と事業用の物件が同じ建物、あるいは同フロアに混在している場合、近隣トラブルの発端になるリスクもあります。事業向けとして物件を利用する場合、特にシェアオフィスのスタイルやSOHOなら、不特定多数が建物に出入りする事になります。そのようなセキュリティの観点や、事業内容によっては近隣居住者からのクレームでトラブルになる可能性もあります。
事務所利用時の注意点
物件のオーナーとしては利益率も上がるのでメリットも多い事務所利用ですが、できるだけリスクを避けて慎重な事業展開を行うべく押さえておきたいポイントについて確認しておきましょう。
業種確認
事務所利用を容認する場合に必ずチェックしておくべきなのは契約者となる入居事業者の業種です。例えばシェアオフィスやコワーキングスペースもそうですが、一般消費者を相手にするような事業の場合には物件内に不特定多数の人が出入りする事になりますからセキュリティの観点からもあまりお勧めはされません。
例えば「完全予約制」「月額利用」等の方法でスペース解放するようなスタイルを採用するなど、考慮が必要と言えるでしょう。
また、音や臭いなど近隣に影響のでるような事業目的での貸し出しはお断りするのが無難です。
登記関連情報
「事業者に物件を貸し出す」として、それが事業会社なのか個人事業主なのかはわかりませんが、多くの場合事業拠点として物件を利用するケースではその賃料の経費計上があります。例えば個人事業主の方が事業スペースと居住スペースを混在させたい場合には「居住用」と「事業用」で契約内容が異なります。税金や保険料にも影響が出る事になるでしょう。登記や税務処理など事業向けの細かな契約内容について漏れがないように対応する必要がありますから、これらについては専門家の意見を仰ぐようにしましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。ここでは、投資用マンションやアパートを事務所用に貸し出すメリットやデメリット、注意点について紹介してきました。事業利用の場合には長期的な契約が見込める場合もありますし、賃料の上乗せが出来る可能性もあることから、不動産投資事業としては是非積極的な姿勢を見せたい案件でもあります。一方で近隣とのトラブルを避け、低リスク経営を実現する為の工夫も必要と言えますから、事業成功の為に是非専門知識のある不動産会社などに相談してみると良いかと思います。