不動産投資を行う場合にはまず投資用物件(不動産)を取得する事になります。そしてその不動産を所有し、それをもとにして利益を得る過程には様々な税金が発生します。
ここでは、そんな不動産投資で必要な税金について、紹介していきます。
Contents
不動産投資の3ステップ
かかってくる税金の種類を見る前に、まずは不動産投資を始める際の流れについて確認していきます。
投資用物件の購入
不動産投資を始めるにあたってまず手を付けるのが「不動産の購入」です。“投資用物件”と書きましたが、不動産投資では建物の他にも土地を活用した投資などもあります。まずはご自身がどのような不動産を活用してどういった投資を行いたいかを決め、どの程度の利回りを期待するのか、どのくらいの期間を想定して投資を行うのかといった事業プランを立てた上でそれに見合った物件を選択・購入しましょう。
購入にあたっては、多くの場合「不動産投資ローン」の取り扱いがある金融機関と融資契約します。設定した年月をかけて、融資を受けた分を返済していく事になります。
事業運営
投資用物件の購入が決まったら、いよいよ投資物件を活用して収益を得るという事業運営に入ります。
“不動産を所有している状態”であり“所有する不動産に利益が発生している状態”が、いわゆる「事業運営」を行っている状態となります。
「事業」というとなんだか壮大な気もしますが、もちろんその規模は様々です。アパートやマンションを何棟も管理する事業主様もいらっしゃいますし、不動産投資初心者の方などはマンションの1室のみを管理するところから始めるというケースも多くあります。
不動産の売却
不動産投資における最後のステップは「売却」です。近年の不動産投資術では、年金対策として若いうちから不動産を購入して事業運営で収益を上げつつ将来的には老後の資産として残すといった運用方法も注目されています。
いずれにしても、不動産投資(事業)を終える際には不動産を売却、あるいは親族に相続するといった方法で手放すことになります。
不動産投資でかかる税金
不動産投資を行う上での流れには「①不動産の購入」「②事業の運営」「③不動産の売却」の3ステップがある事がわかりました。では、それぞれのステップにおいて、具体的にどういった税金が発生するのかについて見ていきましょう。
不動産購入時
不動産投資を始める際にまず決めるのが投資用物件です。この投資用物件の契約時に必要になる税金について見ていきましょう。
消費税
不動産を取得する際にも「消費税」が発生しますが、土地代金に対して消費税はかかりません。建物の代金や不動産仲介業者への仲介手数料に消費税が発生します。(個人間売買の場合には発生しない)
2021年4月1日からは「総額表示」が義務付けられていますので、不動産購入時の建物の価格表記を見れば消費税額が確認できるようになっています。
仲介手数料については取引額に応じて設定限度額が決まっています。
印紙税
投資物件の購入が決まり、最初の契約で必要になるのが「印紙税」です。大きな契約を交わす時や何か手続きを行う時などに「収入印紙」の貼付が必要になるケースがありますが、この収入印紙を貼付して印鑑を押すことで印紙税を納めた事になります。
不動産の購入時には売主と「不動産売買契約書」、建物を建てる際には建築業者と「建築請負契約書」にて契約を交わします。ここに、定められた金額の収入印紙を貼付する必要があります。
不動産取得税
売買や贈与、交換などにより不動産を新規に取得した際にかかるのが「不動産取得税」です。税額は固定資産税評価額に対して算出されます。
登録免許税
「登録免許税」とは、不動産の購入にあたってその土地や建物の所有権を登記する為の手続きの際に納める税金のことです。法務局(登記所)にて手続きを行いますが、税額はその土地や建物の評価額に税率をかけることで算出されます。
事業運営時
投資用不動産を購入すれば、いよいよ事業のスタートです。事業運営を行うにあたっては“不動産を所有していること”で発生する税金と“利益をあげていること”で発生する税金があります。
固定資産税
物件を“所有している”ことで発生するのが「固定資産税」です。毎年1月1日時点で所有している不動産に対して課税されます。税率は1.4%で、固定資産税評価額にこの税率をかけて納税額を算出します。
都市計画税
こちらも物件を“所有している”事で発生するものです。「都市計画税」とは市街化区域内の不動産を所有している場合に納税対象となる税金です。土地には大きく「市街化区域」と「市街化調整区域」がありますが、「市街化調整区域」では建物を建てる事が出来ません。従ってマンションやアパートなどの建物そのものや、建築可能な土地を購入する場合にはたいていこの「都市計画税」が課せられることになります。税率は上限0.3%として各自治体が設定します。
所得税
不動産投資で家賃収入などの収益を得る場合には「所得税」を納税する必要があります。累進課税で所得が高くなればなるほど納税額(税率)も高くなるのが特徴です。
年間収入が不動産投資からの収益のみであれば、不動産投資の収支がそのまま所得額となりますが、会社員などで不動産投資を副業としている場合には、本業での収入と不動産投資の収入とを合算した金額から年間所得を算出します。
住民税
所得税と同様に、不動産投資でなくても発生する税金が「住民税」です。所得がある人ならその所得に対して定められた税率で住民税が算出されます。所得応じて課税される税ですが、基礎控除をはじめ社会保険控除、生命保険料控除、扶養控除、配偶者控除などの色々な控除枠があるのでこれらを差し引いた金額で税額を算出することができます。
個人事業税
会社員として企業に属すなどしておらず、不動産事業1本で、さらに自身が事業者となる場合には個人事業主となる訳ですが、個人事業主が収入を得る場合に課税されるのが「個人事業税」です。この個人事業税では課税対象事業が定められており、“駐車場業”や“不動産貸付業”が対象となります。さらに、課税対象となるのは一定の事業規模を超えた場合であり、基準となる規模については各自治体で定められています。
大きな金額になりそうなイメージはありますが、年間を通して不動産投資を行っていた場合には最大で290万円の控除もあります。
消費税
事業を始める前の物件購入時にも「消費税」が発生しましたが、ここで紹介する事業運営中に納税する消費税は、不動産事業で得る収益のうち対象となるものに対して課税される「消費税」です。
しかし、一般的な賃貸住宅で設定している“家賃”は、生活に欠かせないものという背景から消費税の課税対象外なのでアパートやマンションなどの賃貸経営で回収する居住者からの家賃は消費税の対象外です。対してオフィスや倉庫などの事業用不動産物件は消費税の課税対象となります。
また、消費税の課税対象となるもう一つの条件として「課税事業者」であるかどうかも重要です。同じ不動産事業を行う場合でも、年間の売上高が1000万円以上ある事業主が消費税の課税対象となります。
従って「①投資対象物件が住宅用であること」「②住宅用以外の用途の物件を貸し出す場合でも年間売上が1000万円以下であること」これらの環境下での事業であれば消費税支払いは不要となります。
不動産売却時の税金
不動産投資を行う際の最後のステップとして考えられるのが「不動産の売却」です。“事業をやめるとき”“違う物件の投資に乗り換える時”などに既に所有している不動産を売却します。こういった、不動産を手放す時にかかる税金を紹介します。
譲渡所得税
不動産の売却により所得を得た場合にかかってくるのが「譲渡所得税」です。まず前提として、この譲渡所得税の算出では計算対象所得が「長期譲渡所得」「短期譲渡所得」の2パターンに分けられます。
①「長期譲渡所得」・・売却した物件の所有期間が1月1日時点で5年以上だった場合の所得
②「短期譲渡所得」・・売却した物件の所有期間が1月1日時点で5年以下だった場合の所得
長期と短期の場合では、税額を算出するための税率が異なります。所有期間が短い短期の方が譲渡所得税の税率が高く、その分多く税金を納める事になります。(長期:15.315%/短期:30.63%)このように短期の税負担が大きいのは、短期売買で利益を出す投資方法を抑制する狙いからです。
その他のケース
不動産投資事業を行っている場合に、これまでに紹介してきたような3つのシーン以外でも、「相続」「贈与」などで納税の義務が発生します。
しかしこれら「相続」や「贈与」に関しては基礎控除の設定もある為、実質の納税額はゼロとなるケースもありますし、申告の義務が生じないケースもあります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。ここでは、不動産投資事業で発生する色々な「税金」について紹介してきました。納めるべき税額を算出するための計算式ではその掛け率が自治体により異なるケースもありますし、その時その時で正しい金額は都度確認する必要があります。
一方で、事業者をサポートするような様々な税控除が定められているのも事実です。“〇〇円以上~〇〇円以下”といった枠組みで税率や控除の金額の算出が決められているものもありますから、事業を行う上で常にそういった収支計算にアンテナを利かせておくと損のない収支報告が挙げられるかと思います。
もちろん、専門知識のある方に相談する事もできますから、是非事業運営の参考にしてくださいね。