新築のお家を建てる場合や、増築、改修のときには必ず「建築基準法」遵守する必要があります。
この「建築基準法」では、工事の前に「建築確認申請」行うことが必要ですが、逆に建築物でないのなら建築基準法のルールに従う必要はありません。
トレーラーハウスは、設置条件などにより「建築物」にも「車両」にもなり得る空間です。
ここでは、トレーラーハウスの設置・運用にあたって「建築確認申請」の要否やトレーラーハウスとコンテナハウスの違いについてもわかりやすく説明していきます。
Contents
建築確認申請とは?
通常、建物を建てるときには、構造、耐久性、防火などに関しての建築基準法や、用途地域や建ぺい率などに関わる都市計画法など建築に関しての様々な法律を遵守する必要があります。
建築計画が法律をしっかり守った適切なものであるかを確認するために、「建築確認申請」を行うことが必要とされています。
トレーラーハウスの建築確認申請
結論から申し上げると、トレーラーハウスは、いつでも移動できるという観点からはクルマであるため建築物ではないという判断がされ、建築基準法の適用はなく建築確認申請は必要ありません。
ただし、トレーラーハウスが建設物ではなくクルマであると判断されるためには、「随時かつ任意に移動できる」状態である必要があります。
つまり、「随時かつ任意に移動できる」という条件をクリアできないトレーラーハウスは建築物であり、建築確認申請が必要ということになります。
トレーラーハウスの固定資産税
トレーラーハウスが随時かつ任意に移動できる状態であれば「自動車」とみなされますから、自動車に関わる税金の支払はしなくてはなりません。一方で、通常建築物や土地に対して発生する固定資産税は支払わなくて済むことになります。それも、トレーラーハウスを利用する大きなメリットです。
トレーラーハウスの設置条件
トレーラーハウスが車両として判断されるための条件に「随時かつ任意に移動できる」状態というものがありますが、 トレーラーハウスが「建築確認申請」不要であるべき条件とは一体どのようなものなのでしょうか。
「随時かつ任意に移動できる」状態を簡単に説明すると、以下の条件が必須となります。
- ・トレーラーハウスが走行可能な状態であること
- ・走行に支障をきたさない状態であること
トレーラーハウスが走行可能な状態であること
トレーラーハウスが現在走行可能な状態であることという項目は正式には「随時かつ任意に移動できる」状態であることと定められています。
これはつまり、物理的な視点でのチェックが最優先となります。
つまり、<車両として走行できること=走るために車輪の状態が充分であること>という条件を維持していることが必要となります。
トレーラーハウスは基本的には車輪がついているものですが、何らかの状況によりそもそも車輪がついていない状態だったり、タイヤがパンクしていたりするような状態がないとも言い切れません。
この場合、すぐに走れるとは言いきれませんから「車両」ではなく「建築物」とみなされます。
また、法律的に見れば、法律を遵守し公道へとスムーズに移動できる状態であることも必須条件です。
車検を受けてナンバープレートが交付されている状態が必要、また、基準緩和認定、特殊車両通行許可および臨時通行許可いわゆる仮ナンバーを受けられる状態である必要があります。
大きさが一定以上のトレーラーハウスは、自動車の保安基準から除外され車検を受けることができません。通常は車検を受けることができないのならば公道を通行することはできません。しかしそれでも、基準緩和認定、特殊車両通行許可、臨時通行許可によって公道を通行することが可能となりますから、これに該当している必要があります。
走行に支障をきたさない状態であること
トレーラーハウスそのものが走行可能であっても、以下のような状態では随時かつ任意に移動できるとは言うことができません。
- ・トレーラーハウスの移動に支障をきたす、階段/ポーチ/ベランダ/柵……などがある状態
- ・給排水、ガス、デッキ、冷暖房などのための設備配線や配管などが、工具でなければ外すことができない状態
- ・トレーラーハウスを、設置場所から公道まで移動することができない状態
ごく簡単にいえば、トレーラーハウスをすぐに動かすことができないのであれば、「随時かつ任意に移動できる」状態とはいうことができないということです。
上記のような状態を避け、定められた条件を満たした上で設置されていることがトレーラーハウスを「車両」として登録する方法です。
トレーラーハウスのカテゴリ
ここまで、トレーラーハウスが「車両」とみなされるための条件についていくつか紹介しましたが、そもそもトレーラーハウスは「建築物」なのでしょうか。「クルマ」なのでしょうか。
これについて、改めてトレーラーハウスの歴史から紐解いてみましょう。
トレーラーハウスの歴史
トレーラーハウスがはじめて日本に輸入されたのは、1990年ごろのことです。かなり前からある印象ではありますが、2023年現在、正直まだそれほどトレーラーハウスが深く日本に浸透している訳ではありません。
当時、トレーラーハウスは別荘地などに多く設置されていました。しかし、1995年の阪神・淡路大震災では、被災者の方々向けにトレーラーハウスを提供しようと考えたのですが、建築行政から許可がおりなかったそうです。
そのころから、トレーラーハウスが「建築物」なのか「車両」なのかという議論はありました。
しかし法整備が進まず、定義があいまいなままトレーラーハウスに対しての疑問は増え続けるばかりでした。
トレーラーハウスが安心して活用されるためにも、明確な基準が必要であり、法整備が必要とされ、平成14年にトレーラーハウスに関する法整備を定める為の行政会議が行われました。
平成14年日本建築行政会議
平成14年日本建築行政会議において、「建築物」でもあり「車両」でもある。あるいは“どちらでもない”カテゴリとなる「車両を利用した工作物」という項目が登場することになりました。
そこでは、バスや、キャンピングカー、トレーラーハウスなどに対して、土地への定着性があるものは建築物とみなすと定められています。
また、設置した当初は定着性がない状態であったとしても、その後で土地への定着性を認めた場合には、建築物として取り扱うことが適切であるとされました。
平成24年制度改正
平成23年に東日本大震災が起こり、トレーラーハウスを店舗や公共施設などに活用したいというリクエストが急増し、国土交通省が要望に応えた形で平成24年には制度改正が行われました。
トレーラーハウス運搬に関わる制度改正によって、車幅2.5m以上(保安基準第2条の制限超)のトレーラーハウスは基準緩和の認定を受け、プラスして特殊車両通行許可を取得すれば運行することができるようになりました。
また、運行する時にはスピードの制限や車両の前後への誘導車の配置などといった運行のための安全性を確保する必要があると定められました。
平成25年日本建築行政会議
24年の制度改正を経て、更に翌年の平成25年には日本建築行政会議に建築物として認めるケースについて追記されることになりました。
「随時かつ任意に移動できる状態」と認めることができないものは「建築物」としてみなすことになりますが、そこにプラスして、臨時運行許可や特殊車両通行許可といったものを取得しただけでは、随時かつ任意に移動できるものとは判断できないと言った追加条件が補足されることになります。
現在の詳細な定義については、トレーラーハウス協会のHPからも確認することができます。
トレーラーハウスとコンテナハウスの違い
トレーラーハウスを、コンテナハウスと混同している方々も少なくありません。しかし、トレーラーハウスとコンテナハウスでは、建築確認申請の面からも違いがあります。
結論を申し上げると、コンテナハウスは「建築物」です。一方でトレーラーハウスは、基本的には車両としての扱いとなります。
コンテナハウスは、トレーラーハウスとは違い建築基準法が規定している「建築物」と見なされているため、建築基準法に適合できていないものは違反建築物と判断され、行政によって撤去や使用禁止を命じられてしまうことがあります。
かつてコンテナを有効活用した建築物に対しての行政の対応は曖昧であったこともあって、建築確認申請を受けないで輸送用 ISO コンテナをカラオケルームや倉庫などに流用するシーンを頻繁に見かけることがありました。
しかし、現在では規制や取り締まりが強化されているため建築基準法を遵守することが必須条件となっています。
コンテナハウスを利用したいと思えば、「材料」・「構造」・「溶接」などを充分配慮した建築専用コンテナを活用することが現実的な選択肢となります。
一方で車両扱いであるトレーラーハウスは、建築確認申請が必要ありませんし、タイヤのついたシャーシが土台となるため、設置する時に基礎工事を行う必要もありません。
まとめ
いかがでしたか。
今回は、トレーラーハウスの「建築確認申請」の要否や歴史、コンテナハウスとの違いについて紹介しました。
現在のことを言えば、トレーラーハウスは基本車両であり建築確認申請は必要ありません。
ただし、それは建築物と見なされた場合です。トレーラーハウスが建設物でないと判断されるためには、「随時かつ任意に移動できる」状態であることが必要です。
数度の法改正が行われたとは言え、現状ではまだトレーラーハウスに関しての法律は充分に確立・整備されているとは言い難い面もあります。
トレーラーハウスの扱いに関しては、それぞれ行政ごとに判断も色々なので、使用を検討している場合、設置先の自治体に問い合わせするといいでしょう。
今後また、トレーラーハウスに関する法改正などが行われる可能性もあります。
トレーラーハウスに関心をお持ちであれば、最新情報には常に注目する意識をもつようにしてくださいね。